農業法人の
紹介

(有)南橋商事

いつもお世話になっております。鹿児島県農業法人協会事務局の坂口です。

今回は鹿屋市で「紅はるか」を中心にサツマイモを自社面積約16ha、契約面積約76haを栽培。年間約3,300tを取り扱い、海外輸出や6次産業化を積極的に展開されている有限会社南橋商事を紹介します!

焼き芋にすると糖度が50度前後になり、蜜のように甘く、きめ細やかでクリーミーな舌触りが大人気の紅はるか。海外からも高く評価されている南橋商事さんの紅はるかは、生産から出荷にいたるまで、細心の注意が払われています。(有)南橋商事提供

こちらは育苗ハウスの様子。紅はるかの作付けは、契約農家分もふくめすべてウイルスフリー苗で行っています。県下に深刻な被害をもたらしているサツマイモ基腐病ですが、「昨年は約3割、今年は現在約2割の被害に抑えている形です」との矢羽田社長のお話です。(有)南橋商事提供

土づくりのこだわりは緑肥用品種のえん麦を、サツマイモ収穫の終了後に栽培し、すき込むことで、自然の力を利用した病害虫予防に役立てます。さらに南橋商事オリジナル堆肥を施し、ふわふわの土でサツマイモ栽培に取り組んでいます。(有)南橋商事提供

こちらは「キュアリング貯蔵庫」。キュアリングとは、収穫時に傷ついたさつま芋を高温多湿の条件のもと貯蔵することにより、傷口の表皮下にコルク層(かさぶたのようなもの)ができ、自然治癒することをいいます。(南橋商事さんのHPより)南橋商事さんでは、1回で約100tものキュアリングが可能です。((有)南橋商事提供)

南橋商事の紅はるかの美味しさを左右する貯蔵施設(仕入先の札が映っている部分は加工しました)こちらで約40日間貯蔵し、熟成させます。現在は約600tの貯蔵能力を誇っています。

その後も、サイズの選別から発送作業にいたるまで、みなさんスムーズに作業をされていました!

南橋商事さんは、6次産業化への取り組みも有名ですね。現在の取扱商品は、真空パックの焼き芋、干し芋、焼き芋せんべい、パリパリ焼き芋になります。最近は干し芋が人気で、県内の大手スーパー(名前を伏せる必要もないところですが)で取り扱いをスタートされています。

せんべい製造のためのペーストづくり
せんべい製造機

6次産業化で成果を上げるには、加工施設の充実はもちろんですが、生産がおろそかにならないことや、売れる商品(お店に置いてもらえる商品)作り、販路拡大への取り組みが不可欠です。パイオニア的存在である南橋商事さんには、すべてが万全の体制であると感じました。焼き芋せんべいの開発にあたり、鹿児島県大隅加工技術研究センターのアドバイスを受けるなど、謙虚に学ぶ姿勢も素晴らしいです。

今回の取材では、代表取締役の矢羽田竜作さん(43)と会長の南橋茂さん(71)、そして商品企画開発部・営業部の部長を務める牧谷滉平さん(24)にお話を伺いました。

左から牧谷さん、南橋さん、矢羽田さん

南橋商事さんの紅はるかの海外輸出は、タイや香港の他、今年からカナダ向けもスタートするなど拡大を続け、売上全体の約3割を占めるまでになりました。輸送の際に発芽させないよう、リーファーコンテナ(13度に設定)の活用も大きいですが、「生産、貯蔵、出荷のどれかひとつでもいい加減にすると、品質は必ず落ちる。当社は“ちゃんとした努力”を欠かさぬよう心掛けています」と気を引き締める矢羽田社長です。また「コロナなど様々な要因で、国によっては前年比ゼロになる場合もあり、海外取引はリスクが高い。国内にもベースをしっかり持って、販路を拡大していきたい」と話されています。

取扱量増加に備え、新しい貯蔵庫を建設中でした!

南橋商事さんには牧谷さんをはじめ多くの若い方が活躍されています。牧谷さんは2015年に入社し、「農の雇用事業」の研修生として、2年間、職場内で農業技術や経営などの研修を受けています。

「農の雇用事業」は、農業法人等が新規に農業に従事する者を雇用し研修を実施した場合に、研修費用などを助成します。私は研修状況の聞き取りを牧谷さんに行った際、他の研修生さんより口数も少なく、「大丈夫かな?」と心配したことも。しかし、当時指導にあたった矢羽田社長は「芯が強い子で期待している」とコメントされています。その言葉通り、コツコツと努力し実力をつけてこられました。おみそれして申し訳なかったですm(__)m

入社され6年余りですが、「サツマイモの調製、出荷先の選定、箱詰めの采配はすべて彼に任せています」と、矢羽田社長の信頼も厚いです。

ちなみに牧谷さんは、2019年3月に鹿児島県農業法人協会が(一社)日本フードサービス協会の依頼を受け参画した産地交流会で、商談会と現地視察に対応。名だたる外食産業のバイヤーに物おじせず臨んでいる様子は、とても誇らしく感じました。

牧谷さんのように、かつて農の雇用事業の研修生だった方が、研修を通じて成長され、重要な仕事を任されるなど県内各地で活躍されています。中には後進の指導にあたられている方もいて、とても頼もしくうれしいです!「農の雇用事業」について詳しく知りたい方はホームページでご確認ください。(助成内容や事業要件、手続き等は年度によって変更される場合があります)https://www.be-farmer.jp/farmer/employment/

南橋商事さんの前身は、現会長の南橋茂さんが1976年に設立した(有)南橋商店で、焼酎やお菓子用のサツマイモ(紅さつま、黄金千貫)やジャガイモ生産が主な事業でした。1992年に現在の名称に変更し、2010年から自社農園の主要作物を青果用の紅はるかに転換。その後の活躍はみなさんご存知の通りですね。

現社長の矢羽田竜作さんは福岡県のご出身。中学卒業後、漁師のアルバイトをするほどの釣り好きで、鹿屋市で干物の仕入れ販売を営んでいたお兄さんの手伝いに従事していたところ、同じく釣りが趣味だった南橋会長と知り合い、21歳の時南橋商事さんに入社されています。

2016年7月、南橋さんが体調を崩されたのを機に矢羽田さんに社長交代、親族関係のない従業員に経営を譲るのは、現在でも珍しいケースです。「一番の農繫期に入院してしまったのだが、4カ月余りの間、彼は何も問題なく会社を回してくれた。これが決め手になった」と語る南橋会長。現在は、経営について口を出すことはなく、主にサツマイモの運送業務に従事されています。

前出の日本フードサービス協会が行った現地視察で挨拶する南橋会長

「彼が社長になって事業規模が何倍にもなった。早めに譲ってよかった」と南橋会長は謙遜されますが、矢羽田社長は「いやいや、施設整備や契約農家さんとの信頼関係など、会長がベースを築いてくださったおかげ。こわさないよう緊張感を持ちつつ会社を発展させたい」と強調します。

私はどうしても、親族以外の方へ経営承継した会社にはドライなイメージを感じてしまいますが、南橋商事さんはとても温かみのある家庭的な雰囲気でした(^^)牧谷さんはじめ社員さんも、のびのびと仕事をされている印象です。このあたりは、南橋会長と矢羽田社長との絆の深さがなせる業なのでしょうね。

矢羽田社長、南橋会長、牧谷部長、お世話になりました! 南橋商事について詳しく知りたい方はこちらからhttps://imonosora.co.jp/

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