農業法人の
紹介

(有)西田農産

いつもお世話になっております。鹿児島県農業法人協会事務局の坂口です。

今回は、種子島の西之表市にある、有限会社西田農産を紹介します。

(有)西田農産提供

蜜たっぷりの安納芋♪西田農産さんといえば、安納芋の生産・加工・販売で6次産業化への取り組みが有名ですね。2021年の植え付けが、安納芋72haの他、玉ねぎや山芋、生姜、またサトウキビや早期水稲を生産しており、総経営面積は約105haにのぼります。

代表取締役の西田春樹さん(67)と後継者の西田博一(41)さんにお話を伺いました。(撮影時はお願いしてマスクを外していただいています)

西田社長はもともと、株式会社西田工業で建設業を営んでいますが、2002年をピークに公共事業が減少。企業の生き残りと、「絶対リストラしない」の信念のもと、2003年4月に有限会社西田農産を設立し農業に参入。本県でも他産業から農業に参入する企業が増えていますが、西田社長は先駆け的な存在です。現在、両社の売上はほとんど同じとのことでした!

西田社長自身は農家出身、また従業員も兼業農家の方が多く経験豊富のため、栽培技術は問題なく、高品質なサツマイモ生産に取り組めています。参入当初は、コガネセンガンなど焼酎用サツマイモも生産していましたが、本格焼酎ブームが落ち着き、取引量の減少や価格の下落に直面。2014年に焼酎用サツマイモの生産を終了し、現在サツマイモは安納芋のみになります。

焼き芋といえば、以前は「ほくほく系」が主流でしたが、近年は安納芋など「しっとり系」の人気が高まっています。西田農産さんでは当初から、青果で売るだけでなく、冷凍焼き芋やペーストなど加工にも取り組んできました。西田社長は「手間をかけるのは面倒だが、付加価値をつけないと。50円のものが120円で売れる場合がある。お客は良いものと実感すれば高くても買ってくれるよ」「B品(規格外)を磨くことはA品のレベルアップにつながる」と話されます。

博一さんは加工のメリットを「商談などで足下を見られないこと」と話されます。「例えば業者が“B品ください、どうせ捨てるものでしょ”と買い叩こうします。しかし、収穫の手間、集荷の手間、運賃はA品もB品も変わらないので、必ず損をする。“うちは加工用で使うので”と断ります」「価格交渉をしなくて良いことは、強みですね」と胸を張ります。

お話の後は、博一さんのご案内でほ場や施設を回りました♪

一面に広がるサツマイモ畑♪5ha区画です!「奥は見えないので、生育状況の確認はドローンを使いますよ(笑)」とのこと。

こちらをはじめ、西之表市内の耕作放棄地を西田工業の機材をフル活用し再生、規模拡大にまい進しました。地権者の方にも喜ばれています。また農地バンクなどの活用にも努めていますが、「担い手農家の規模拡大の邪魔にならないように」との考えが念頭あります。

こちらは収穫風景です(下記3枚は西田農産さん提供です)

収穫期(9月~12月)は西田農産の総勢39人(うち外国人技能実習生9人、2021年7月現在)はもちろん、西田工業の社員さんも加勢します。博一さんは「安納芋は丁寧に取らないと皮がはげてしまいます。桃と同じですね。どうしても手作業になりますよ」と話されます。

上の写真は海岸近くにある畑です。(こちらも広い!)西田農産さんが生産している150枚以上の畑には、このように看板がかけられています。

今度は西田農産名物、石蔵貯蔵庫へ。視察などで初めて訪問する方は、その大きさにびっくりします。

(貯蔵庫内の写真は西田農産提供)

ご存じの方も多いと思いますが、安納芋は収穫したら、1ヶ月以上は貯蔵して熟成させることが不可欠です。こちらの貯蔵庫は、まさに西田農産の安納芋のおいしさを左右します。今はオフシーズンですが、こちらの貯蔵庫は最大600トンまで入るとのこと!西田農産さんは4つの貯蔵庫を所有しています。

続いて堆肥舎へ。博一さんが最も力を入れている土壌改良です。熱を込めて説明いただきました。

牛ふんにサトウキビの搾りかすを配合して、堆肥を作ります。下から空気を入れる仕掛けで菌を活性化させます。中の温度は80度を超え、完熟堆肥が完成します。

現在、「サツマイモ基腐病」が発生し、でん粉や焼酎用も含め本県のサツマイモ被害は深刻で、農家に多大な影響が出ています。しかし、昨年は西田農産さんではほ場での被害は軽微であったとのこと。普段からの土作りのたまものでは?との質問に「功を奏したかも。でも今年は油断できない」と危機感を募らせます。「農薬が必要な場合もあるが、当社は極力、強い土作りを優先して病気を抑えたい」と話す博一さんです。

そして、特許を取得した、炭火焼きいも釜!

こげては商品にならない焼き芋。西田社長は桜島の溶岩プレートでこげずに鉄板焼きができるのをヒントに、焼き芋製造用の溶岩プレートを特注。下に炭を入れ、プレートの上をベルトコンベアーで移動させて加熱すると、こげることなく美味しい焼き芋ができあがります😋このほか、お菓子などに重宝されるペースト用の蒸し器やグラッセの製造施設もあります。商品は最大500トン入るマイナス20度の冷凍庫へ保存し、出荷に備えます。

また製材所と焼き芋製造用の炭を作る釜もあり西田工業さんで杉の木を伐採・製材、炭を

作ります。良い炭作りからという、こだわりが感じられます。

博一さん、お忙しい中ご案内ありがとうございました!

舞台は飛んで(笑)、鹿児島市の西田農産さんの直売店「はるちゃんfactory」へ♪

生の芋から焼き芋、冷凍焼き芋、ソフトクリーム、シフォンケーキ、チップス、そして焼酎にいたるまで、安納芋好きな人にはたまらないお店♪また、ペーストを求めてケーキ屋さんがよく来店されるようです。

お店を切り盛りする鎌田智恵さんと優子さんにお話を伺いました。(撮影時はマスクを外していただいています)

大手の取引先との商談は種子島の本社で行いますが、「お客様の生の声を聞くことが大事」と10年前にオープン。西田社長の長女である優子さんに声がかかり、ご主人の智恵さんもサラリーマンを退職し、焼き芋やお菓子作りを勉強されてきました。

老舗のデパートや銀行(名前を伏せる必要もありませんが(笑))に近く、人通りも結構多いですが、休日なのに閉まっていることも多く「商売っ気がないな」と通りがかる度に思っていましたが、留守にしている大半は各地で開かれるイベント出店のためでした。

例年であれば出店回数は30回以上を数えていましたが、昨年は軒並みイベントが中止になりゼロに...。しかし「リピーターの方が口コミで広めてくださるなど、お客様に助けていただきました」と、売上減少が最小限にとどまったことに、お二人は感謝されています。

「一人でも多くのお客様に知っていただくことが大事。日程が合えば必ず参加します」と話す智恵さん。そのひとつが、鹿児島県農業法人協会が主催する「農業法人ファーマーズマーケット」です。西田農産さんは初回から出店いただいています!

昨年は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、会員の商品詰め合わせを事前予約で販売する方式でしたが、今年は感染防止策を講じて、出店方式を目指しています。12月18日(土)~19日(日)、両日とも10時から15時30分に、鹿児島市のウォーターフロントパークで開催予定です。近々ご案内しますので楽しみにしてくださいね。

現在は種子島以外でも作られている安納芋。味にばらつきがあると信用が低下した時期があり、「今でも“種子島の安納芋ですか?”と確認されることがあります。信頼回復は道半ばです」と智恵さん。優子さんからは「これからも美味しい本物の安納芋を届けたい」とお話いただきました。

  <はるちゃんfactory>

   〒892-0822鹿児島市泉町1-5 TEL099-223-1013

   営業時間10時~18時 日曜・祝日のほかイベント出店時は休み

   (FacebookとInstagramに情報を配信しています)

舞台は再び種子島♪西田農産さんでは「GLOBALG.A.P」も取得され、タイや香港への安納芋の輸出に取り組んでいますが、博一さんは「まだ何100キロ程度のレベルで、費用を考えるとまだまだです。もちろん輸出は大事ですが、日本国民にはまだ西田農産を知らない方も多いです(笑)、国内にしっかりPRして、海外から買い求めにくるくらい知名度をあげたい」とのことです。

また、博一さんが目指しているのが循環型農業です。「種子島には大規模にされている酪農家さんが多いです。牛ふんをいただき、当社生産のサトウキビの絞りかすと配合し堆肥を作り、農産物は作れています。あとは資材の再利用。まだ構想段階ですがマルチの燃料化を実現して、種子島の資源で回せる農業をしていきたい」と抱負を語られます。

今回の取材全体を通じて西田社長は、「全部息子に聞いて」という調子でした。博一さんは鹿児島市で薬剤師をされていましたが、昨年10月に種子島に戻り、西田農産全般を仕切っていらっしゃいます。1年たっていないのにすごいとの感想には、「ほぼ毎日会社にいればわかってきますよ」とのお返事。しかし、前職の薬剤師の知識を活かしつつ、西田社長のアドバイスを受けながら、土作りから生産、加工、販売の細部に至るまで把握し、社員さんに指揮されている姿を拝見して、西田農産さんの事業継承は順調に進んでいると感じました。もちろん、まだまだ西田社長もお元気ですが(笑)

西田社長、博一さん、鎌田智恵さん、優子さん、お世話になりました!

<追伸>

7月7日、鹿児島県農業法人協会の2代目の会長を務められた、清水克己様(清水園芸(株)会長)に、西田春樹副会長より感謝状を伝達いたしました。

清水克己様は鹿児島県農業法人協会設立時からのメンバーです。初代会長の故・本田信一様(南州農場(株))の後任として、2006年に会長に就任。2012年に勇退されるまで3期6年務められました。

就任当時、「本田さんはとても偉大な方、私にはとても務まらない」と恐縮されていた清水さんですが、持ち前のユーモアで周囲を和ませ、理事会など自由に意見できる雰囲気を作られました。

また、ちょうどファーマーズマーケットを開始した時期で、事務局も経験がないなか戸惑いもありましたが、「坂口さん、白石さん(当時の担当者)、大変なことを頼んで申し訳ないね。私が責任をとるから思い切ってやってね!」と、おっしゃっていただいたのが思い出です。ちなみに、ご本人は「そんなこと言ったっけ?」と忘れておられました(笑)

久しぶりにお会いして、お元気で何よりでした。清水さん、いつまでもお元気で!

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