農業法人の
紹介

(株)南風ベジファーム

いつも大変お世話になっております。

鹿児島県農業法人協会事務局の山野です。

今回は、南さつま市金峰町の【(株)南風ベジファーム】をご紹介します。

(ホームページ:http://www.nanpuu-vege.com/)

今回は、代表取締役の秦泉寺(じんぜんじ) 弘さんにお話を聞くことができました!

秦泉寺さんは、平成29年度から当協会の監事を務めていただいております。その際に、近況などお話を聞くことがありますが、質問すると様々なことを教えてくださる先生!の印象を持っていました。でも、経営について語る姿を見て、論理的に判断することに優れていらっしゃり、農業の枠にとらわれないチャレンジャーな一面を新たに発見することができました!

お忙しいところ、ご対応いただきありがとうございます(*^▽^*)

平成24年8月に(株)南風ベジファームとして法人化、平成27年1月には障がい者福祉サービス事業就労支援事業所南風i(アイ)」として認定を受け、令和2年1月に障がい者福祉サービス事業部門を分社化した(一社)南風を設立。(一社)南風は現在、役員1名、職員9名、パート35名(内11名が障がい者)、雇用外障がい者25名で業務に励んでいらっしゃいます。

(株)南風ベジファームは現在、役員1名、社員1名、パート5名に加え、(一社)南風に毎日30名程度の作業を依頼しています。経営規模は5haで高菜、米、ウメ、ラッキョウを中心に生産されています。他にも、赤シソ、大根、カブ、ホウレンソウ、ジャガイモ、タマネギ、ニンニクの生産や農産加工も取り組んでいます。

秦泉寺さんは、福岡県出身で鹿児島大学を卒業後、鹿児島市内の漬物会社へ就職したものの、会社が1年半後に倒産。その会社の事業や従業員を引き継ぎ(有)ちくしのフーズ(本社は筑紫野市)を設立。県内のスーパーを主な取引先に旧吉田町の工場で漬物製造と卸売を始めました。

旧吉田町の工場は賃貸のため、「いつか自社工場が欲しいな、、、」と思っていたところに、南さつま市金峰町にある現在の第1工場の前オーナーと知り合いました。前オーナーから経営難のため工場を売却したいと話がありました。(有)ちくしのフーズの事業は順調に伸びていましたが、原料野菜の生産者の減少や野菜の値上がりに直面しており、自社で原料生産することが必要だと考え購入されました。

お母様の実家が農業を営んでいらっしゃり、農業について親しみを持ちつつ、農業経営の難しさも理解したうえで始めました。

その後、(有)ちくしのフーズは吉田町から南さつま市へ移転。地元自治体と立地協定を結ぶとともに、農業関係の支援を得るには鹿児島の企業が必要だと考えたことが(株)南風ベジファーム設立のきっかけとなりました。

いざ、始めよう!と準備を進める中、求人しても応募がこない日が続き、吉田町で働いていた時から興味のあった障がい者雇用に取り組み始めました。

取材の中で「鹿児島は障がい者数が多いって聞き、単純な障がい者雇用だけでなく支援しながら働く環境を作っていきたい。その環境を作れば、誰でも働ける環境を作ることにも繋がる」と熱く語ってくれました。

まずは職員に障がい者雇用に関する研修にでてもらい、秦泉寺さんは2年間の通信講座で精神保健福祉士の資格を取得。働きながら資格取得など、努力なくては実現できないことを淡々と語られ、自分のことを誇示されない謙虚な姿がチラチラとヾ(^v^)k

(株)南風ベジファームさんは障がい者雇用もですが、6次産業化と農福連携を一体化することで安定雇用や近隣農家の作業受託を行っています。

まずは、6次産業化について!

(株)南風ベジファームの設立経緯から、生産より加工が主体としてあります。ここでも秦泉寺さんらしい戦略があります。

「他の人がやりたがらないけど、誰かが『欲しい』と思っているところを行う!」です。

スーパーに並ぶ惣菜は、昔は店内で調理することが主流でしたが、人手不足のため調理する人が減り、店内で調理するのは揚げ物がメインでそれ以外は外部に委託し納品されます。

外部で調理する惣菜を鹿児島で作れる会社が無い!という話を聞き、秦泉寺さんは「うちで作ろうか?」と声をかけ、始まった取引が今でも続いています。

他にも、令和2年9月1日にオープンしたばかりの「アグリカフェ 南風」

屋根が特に変わったデザインで、気になります!

最初のデザイン(案)を作られたのは秦泉寺さん。国立競技場をイメージしてデザインされました。直線的ではなく、波を打つような屋根がとってもオシャレですね,゚.:。+゚

メニューもお食事からデザート、ドリンクまで♪

今回は、ベビーリーフのピザをご紹介!

新鮮な自社栽培のベビーリーフがたっぷり( ´艸`)

色合いもベビーリーフとバジルの緑、ミニトマトと生ハムの赤、チーズと生地の白があり、色鮮やかで見た目も楽しめます。

平日はミニスープ付きで、今回はゴボウとさつまいものポタージュスープでした~

野菜を美味しく食べる方法をまた1つ発見ですね,゚.:。+゚

ベビーリーフの施設も紹介

イスラエルは砂漠地でありながら農業が発達している話を聞いたことがあり、最初に所有した農地が砂地だったことから、砂地の農業を「やってみよう!」と。コスト等を考え適しているベビーリーフを選択。これだけの重さを耐えられる高床式も設置。

建設会社が開発した設計を元に設置しているため、重量のある砂にも対応できます。

カフェは、お食事だけでなく、ショップも併設されています。

こちらは、自社の加工品の販売だけでなく地域の方の商品も一緒に陳列されていました。

個人的なおすすめは、自社生産のお米を使ってポン菓子にチョコレートをコーティングした「ぽんチョコ」!チョコレートの種類も秦泉寺さんがこだわりました。

ここのカフェでしか販売されていないので、見かけたら是非、試していただきたい一品です。

こちらのカフェは、先日開催の「第七回 かごしま・人・まち・デザイン賞」を「現代まちなみ部門」で受賞されました。

続いて、作業受託について!

農業者の高齢化は以前より課題とされていますが、後継者がいれば継承されていく農地・技術が、後継者がいないことで無くなってしまいます。

そこで、秦泉寺さんはまずは、繁忙期に地域の農作業受託を行いました。離農する農家さんと一緒に作業することで、圃場ごとの特色・傾向や技術を引き継ぎ、スムーズに継承することができます。

離農される方から引き継ぐことで、耕作放棄地の解消に努めていることから、九州農政局が実施する地域活性化の優良事例を発信する「ディスカバー農山漁村の宝(第6回)」で10団体の一つに選ばれました。

受賞紹介:https://www.discovermuranotakara.com/sentei/select6/no31/

繁忙期は作業受託の仕事を行い、閑散期は冷蔵・冷凍した原料を加工する仕事に従事することで、障がい者を通年で安定的に雇用できる仕組みを作っています。

秦泉寺さんは、「どれか一つだけでは成り立たないけれど、農業、加工、福祉の相乗効果でやってこられている」と。

様々な取り組みを行っている(株)南風ベジファームさんですが、秦泉寺さんの考えは一貫して「地域のSDGs(持続可能な開発目標)」で、地域の社会的課題をビジネスの手法を使って解決していくこと。「地域の人のためにならなかったら、続けていけない。地域の中で何が必要なのか、とことん突き止めていきたい」と。“地域”という言葉を今回の取材の中で、何度も発言されました。

農業を始めてから現在まで順調な道ではありませんでした。県外出身の新規就農者ならではの壁が立ちはだかります。第1工場を購入し、次は農地を探しましたが、条件の良い農地は既に代々受け継がれている地元の農家さんが確保していました。そのため、最初の3年間は自社農地での収穫がほとんどなく、加工部門の売上で会社は継続することができました。その時のことを「他の皆さんより失敗を多くしていると思う。これだけ失敗して倒れなかったことが自分の強みかな」と秦泉寺さんは明るく語ってくれました。

たくさんの経験を経ながら継続することで、地域の方から声がかかる機会が増え、作業受託に繋がったり、「何の会社なの?」の問いかけに見える形で答えるためにカフェをオープンしたりと、“地域”に求められる会社になることが、現在に繋がっています。

今後も、その考え方は変わらず、次は「高齢者支援」として、自社所有のバスを活用して、バスで迎えに行き、カフェで食事をとってもらいスーパーで買物してから自宅へ送ることを地元の自治体と計画しています。

カフェの奥には料理教室が始められそうなキッチンスペースがあるため、そこもいずれ活躍しそうですね♪

(カフェ内:キッチンスペース)

秦泉寺さんは最後に、「無理に規模拡大せず、3歩進んで2歩下がるという考えでコストを計算しながら利益を確保できる経営を心がけたい。地域で抱える様々な課題に活路を見いだせる会社になれば存在価値が上がり、残っていける。地域とともに成長する会社を目指し、障がい者とともに挑戦を続けたい」と想いを語ってくださり、「会社も利用者(障がい者)さんも地域もwin-winの関係を築くことが大切です」と締めていただきました。

秦泉寺さん!社員の皆さん!

取材へのご協力ありがとうございました。

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