(農)南州農場
今月は、生産~加工~販売~輸出まで取り組んでいらっしゃる(農)南州農場の紹介をします。
(農)南州農場は、富山県出身で外国航路の機関長をされていた本田信一様が地元の養豚農家とともに1976年8月に設立し、南大隅町佐多で養豚経営をスタートされました。
代表理事の本田信一氏は、当協会初代会長でもあります。
今の鹿児島県農業法人協会があるのは、本田様がいらっしゃったからと言っても過言ではありません。(本田理事長については、来月号で詳しく掲載しますのでご覧下さい)
現在、(農)南州農場は、県内4ヶ所(佐多・野尻野・田代・根占)の直営農場で黒豚・白豚・黒牛の繁殖・肥育を行い、豚の食肉処理場(肝付町)、加工場(鹿屋市)まで一貫したグループネットワークを、形成しています。現在、推進されている「6次産業化」のさきがけとなった会社で、270名(南州高山ミートセンター含む)もの従業員がいらっしゃいます。
商社や生協などと連携し、顧客ニーズに対応して豚の肉質を改良し、「南州農場ブランド」として県内はもちろん、九州、関西、関東と全国的に販売しており、売上高は国内トップクラス。全国的にも知名度が高い法人です。
生産
今回、まず始めに佐多本場におじゃまさせていただきました。
南大隅町佐多は、鹿児島県大隅半島の最南端で、鹿児島市内から約3時間半のところで、晴れた日にはエメラルドブルーの大海原が広がり、豊かな自然に囲まれた場所です、
佐多農場は、広大な緑の中にあり、周辺は崖になっており、豚の病気の原因となるウィルス等の侵入を防ぐ場所に立地しています。太陽の恵みをいっぱい受ける環境の中、約45,000頭の豚がのびのびと育てられています。
佐多農場の広さは約30ha。なんと東京ドームの約6.4倍もの広さで、農場内の移動手段は車やトラックです。(ちなみに、野尻野農場約12ha、田代農場約21ha、根占農場約20ha)
4つの農場では、専門性を発揮できるよう生産工程により役割分担をしています。
今回、私が訪れた佐多農場は母豚3200頭の繁殖・肥育の一貫が特徴の生産農場です。
種豚部、分娩部、肉豚部、堆肥部、工事部の5部門に分かれ、部門ごとに責任者がおり、365日体制で飼育、管理されています。
生産部門である、種豚部、分娩部、肉豚部はさらに3班に分けられています。
佐多農場では100名の従業員が働いており、豚の世話をするのはもちろんのこと毎日約100頭の子豚の出産、約100頭の出荷を行い、年間約69,000頭を出荷しています。
飼育方法としては、オールイン・オールアウト方式で、豚舎ごとに同一日齢の豚を飼育・管理出来ます。また、衛生管理では、水洗いと消毒の後、石灰を塗り込み、常に清潔な豚舎になるよう、心がけています。そのため、病気感染のリスクも低く抑えられています。
石灰が塗られた種豚舎の中の様子
また、南州農場では、獣医師による健康状態や病気の管理など完璧な飼育プログラムの中で飼育されています。
品種管理のために原種部門を農場にもち、元気な銘柄豚を育てるため飼料や飲み水に徹底的にこだわり、豚の立場になってストレスを抱えないよう豚舎移動を最小限にしたりと、愛情いっぱいで白豚は約200日、黒豚は約230日かけ育てられます。
生まれた子豚は、免疫抗体が十分に含まれた初乳を飲んで病気に対する抵抗力をつけ、生後3週間ほど母豚の元で育てられた後、肉豚舎に移動します。(子豚~出荷されるまでエサを7回切り替えながら大きくなります。)
生まれたての子豚には、母豚の初乳がエネルギーの源です。
肉豚舎では、ほぼ同じ日齢のグループで育てられ、ストレスの少ない環境でのびのびと育ちます。「豚にも性格があり、人間に寄ってくる豚は好奇心旺盛で、そのような豚はリーダー的存在だろう。」と獣医師の越前さんはおっしゃいます。
南州農場 獣医師の越前さん
豚舎の中は、夏は自然の風や水で涼しくし、冬は床下に温水を流し、生活しやすい環境作りに取り組んでいます。
バークシャー種
デュロック種
「かごしま黒豚」として有名なバークシャー種から「南州黒豚」を生産しています。また、脂肪が薄く、肉量の多いランドレース種、繁殖能力に優れる大ヨークシャー種、脂肪が多く、霜降りの肉を作るのに最適なデュロック種の3種類の豚を掛け合わせて、「南州ナチュラルポーク」を生産しています。
南州農場のオリジナルブランドである”南州黒豚”は、飼料設計にこだわり、大麦・さつまいも・ヨモギの発酵物を与えています。脂肪の融点が上昇し、べとつかずにさっぱりとした食感で、「肉繊維がきめ細かい」「保水性が高い」「中性糖アミノ酸が多い」などの特徴があります。大切な方へのお中元やギフトも承っています。
“南州ナチュラルポーク”は、豚本来のナチュラルな旨味と臭みやクセを感じない風味とジューシーで柔らかい食感を特徴としております。飼料にはビタミンEやセレンを多く配合しているので、ビタミンE含有量は一般豚の2倍と豊富。また、肥育期からは、動物性飼料や抗菌性飼料を与えず、純植物性飼料(マイロ・小麦・大豆油粕・なたね油粕・ふすま)だけで育て、臭いの元になるリノール酸を多く含むトウモロコシは与えていません。
脂肪酸組成やビタミンE含有量、試食比較テストなどのデータもしっかりと取り、一般豚との比較を見ても、ナチュラルポークの方に、オレイン酸がより多く含まれていること、リノール酸量が少ないこと、あっさりしていること、柔らかいことがよく分かっています。
さらに、南州農場は、「生産情報」と「トレース情報」の開示の為に、国内初・唯一のICタグによる「南州トレースシステム」に2005年6月より取り組んでいます。佐多・根占・田代の3農場で飼育される全ての豚は、ICタグによって管理されています。ICタグには、「15桁の個体識別番号」が入力されたICチップが入っています。
このICタグを利用したシステムは、給餌・投薬・飼養に関する生産情報と出生・飼育・出荷・食肉処理のトレース情報を予め設定されたタイミングで、リーダーで読取り、サーバーにデータを送信蓄積することで社外に対して情報開示可能なシステムです。
ICタグが取り付けられた子豚
お客様も商品購入の際に、トレーサビリティシステムを使って生産履歴情報を確認でき、いつでも安心・安全で信頼される商品をお届けできるよう取り組んでいます。商品パックに書いてあるロットNo.を入力するとこのようにご覧いただけます。
トレーサビリティシステムの紹介
なお、環境対策にも早くから取り組んでいらっしゃり、佐多農場では、豚の尿と近くの野尻野農場からの牛尿を直径50mの大型浄化槽(複合ラグーンシステム)で処理、また、豚糞・牛糞は堆肥舎で処理しており、周辺住民の住環境への配慮、自然環境との調和についてしっかり考えています。
完熟堆肥は、土とよくなじみ理想の土壌を作ることができるので、町内はもちろん、県内外の農家に好評です。
食肉処理場、加工場
食肉処理場として、2004年国内で初めてHACCP認証を取得。また2007年1月にはISO22000の認証も取得し、徹底した衛生管理と最新技術の工場となっています。
ISO22000の登録証
2000年12月、肝付町に協同組合南州高山ミートセンターを設立し、2002年に稼働。
欧州最新技術を駆使した国内トップレベルのと畜場です。
豚のと畜方法はドイツから導入し、ストレスを与えないよう、蒸気湯引方式とCO2ガス麻酔機を使って行うので、衛生面・肉質面ともに安心して食べることができます。その後、解体し枝肉にします。また、農協や他事業者からの委託も応じ、1日当たりの処理能力は豚換算でと畜頭数約500頭、カット頭数約400頭です。
設立5年目の1981年には、付加価値を高めるため鹿屋市で食品加工事業を開始されました。
きっかけは、豚肉の急激な輸入増加による豚価暴落です。
その後、”1987年4月、6月、12月には3つの農場を増設”と、南州農場は飛躍的に経営拡大しました。
食肉を中心とした、生ハム、ハム・ソーセージ、焼き豚、角煮など「手作り・無添加」をセールスポイントにした独自の製法で取り組んでいらっしゃり、おいしいと大人気です。
妥協を許さない焼釜職人の小川理事が、こだわって作り上げた商品はこちらです。
工場内は、とても綺麗で入念に清掃、片づけがされており、品質管理、別室からの入室においても徹底して衛生面に気をつけていらっしゃいました。
マイスターヴェルク
さらに、2011年3月3日、博多阪急に南州農場マイスターヴェルクをオープンされました。
マイスターヴェルクの紹介
相良さんよりおみやげを頂きました!
南州マイスターヴェルクは、「かごしま黒豚」と「ドイツの製法」が融合し、ドイツ食肉マイスター”小林武治郎氏”の監修のもと作られたハム・ソーセージです。私たちが、通常スーパーで目にしないような、ヴァイスブルストや、ケーゼ、リオナー、ニュールンベルガーなどビールやワインに合う製品が揃っています。
また、南州マイスターヴェルクには、「ノンアッド」と呼んでいる製品群があります。このノンアッドは、「温と体」(と畜してすぐの状態で、肉そのものが持つ粘着力を利用した製法)を原料としているので、塩と香辛料のみで、「安心・安全」を追求した究極の製品で、自然の風味が生きた本物の味を味わうことができます。
南州マイスターヴェルクは、現在、博多阪急でしか購入できません!!
女優(元宝塚歌劇団花組トップ)の愛華みれさんも南州農場マイスターヴェルクの本物のハム・ソーセージの味、鹿児島黒豚の味、本場ドイツの味、本当の肉の味を推薦していらっしゃいますので、皆さんも是非ご賞味ください。
愛華みれさんから応援が届きました!
統括本部長の石松秋治様は、本田理事長のことを(石松様が小学生の時から)見た目だけではなく、話すことや人柄もかっこいいなぁと思っておられ、本田理事長を目標に頑張っていらっしゃいます。「南州農場には、昔から人材を多く集め、1人1人の能力を活かす風潮がある。南州農場をここまで大きくできたのは、本田理事長の人徳のおかげだろう。」と石松様は話されていました。
南州農場には5名の理事がいらっしゃり、総合管理、経営、営業販売、食品加工場、農場の責任者として運営に携わっておられます。
食品加工場理事の小川様と相良さん。
今後は、規模拡大よりも中身の充実に力をいれていきたいとのことです。270名の従業員は、色んなアイデアを持っている方、おもしろい方、好奇心旺盛な方と多種多様で、皆さん、1人1人責任を持って仕事をしていらっしゃいます。今後は、従業員にメリットを感じて仕事ができるよう、また、もっと地元住民の雇用や地域の活性化など社会に貢献していくということです。
輸出
南州農場では、2005年から香港向けの輸出をスタートしています。今年度は、年間20トンの出荷計画です。これまでの実績としては、高級スーパー向けの黒豚原料のウインナーやベーコン、ボンレスハム等の輸出を始めとし、日本のとんかつ屋チェーンの香港向け精肉の輸出、インターコンチネンタルホテル香港にて開催された”鹿児島プロモーション”用に黒豚肉の輸出、香港卸売業者向けの白豚肉輸出など、年々、実績を残していらっしゃいます。
輸出を担当している相良さんは、「輸出を行うにあたって、ネック点は、実際に食べてくれている人たちの生の声が直接リアルタイムで分かりにくい」と話します。相手国のニーズを直接リアルタイムで知ることができれば、商品開発や改善点など、もっと見えてくるものもあるのに残念ですよね。
輸出に今後取り組もうとされている方々に対しては、「まず相手国にヒットするようなニーズ(サイズや味など)を勉強し、他社とは違う何か(価格、品質など)で競争し、商品をアピールできる部分をきちんと理解することが大事」とメッセージを頂きました。
初めて豚の出産~加工まで見て、思っていたものと違ったり、想像以上のものだったりと色々な体験をさせて頂きました。
これからも、飛躍し続け、鹿児島を代表する南州農場であってください。応援しています。
今回、理事長の本田信一様をはじめ、統括本部長の石松秋治様、総合管理の柿元理事、食品加工場の小川理事、農場の越前理事、相良様には時間を割いていただき、大変お世話になりました。
ご多忙中にもかかわらず、ありがとうございました。
南州農場についてもっと知りたい方はこちら。