農業法人の
紹介

(株)さかうえ

ある1つの農家が、企業農業法人に進化したお話しをうかがいたく、今月は株式会社さかうえへ訪問させていただきました。

(株)さかうえは、今、数々のマスコミやメディアに取り上げられ、全国から注目されている「農業生産法人」です。

最近、移転した(株)さかうえ

(株)さかうえでは、現在、契約栽培事業、牧草飼料事業、農業経営IT化事業を展開する他、新規事業にも積極的に取り組んでいらっしゃいます。 総作付面積150haの規模で生産しているものは、日本では難しいといわれているデントコーン(飼料用とうもろこし)、ケール、じゃがいも、キャベツ、さつまいも、ピーマンなどで、依頼のある新規作物にも相談の上、対応しています。

(現場の様子)

〜坂上 隆代表取締役のこと〜

(株)さかうえ 坂上隆代表取締役

坂上社長は千葉の国際武道大学卒業後、生まれ故郷の志布志市へ戻り、24歳で両親が生産・経営していた芝の技術を学びました。当時、園芸の技術を学び、知識も身についてきた坂上社長とお父様の意見がくいちがうことや、儲かる農業をやりたいと感じたことから、「自分なりに新しいことに取り組んでみよう」と、ダイコンの生産を始められました。

当時、新聞などで情報収集をし、収益が期待できる青首ダイコンを生産しましたが、高値取引されるようなものでもなく・・・結局はお父様に助けてもらうことになった様です。しかし、「失敗は成功のもと」という言葉がある様に、坂上社長は農産物を高く売ろうという考え方から、いかに「損をしないか」という契約栽培に考え方をシフトされました。


例えば、さかうえ方式の一部を紹介すると、総生産量は6000トンの生産物は、全て大手健康食品メーカーや食品加工メーカーなどとの契約栽培。
そのため、出荷先がないなどの無駄を省くことはもちろん、市場の価格に左右されず、安定した売上げをつくることができます。

2009年、(株)さかうえの社長となってから事業のスピードは加速し、ビジネス雑誌や新聞、テレビなど取り上げられる様になりました。


経営者となってから、会社の3要素である「労働と経営と資本」に対し、農作業という労働からは離れ、経営と資本に力を入れてきた坂上社長。

しかし、そこには、農業を事業としてとらえて展開していく考え方がベースになっています。企業の発展プロセスである方程式を学び、有言実行してきました。 「口でいうことは簡単、行動することが難しいのだから」と今までを振り返ります。

(株)さかうえでは、「会社が世の中に生かされている」ということを常に意識し、会社経営をなさっています。「人との結びつき、〜したいという欲求が多いほど、従業員や売り上げも伸びていく。人間だって同じでしょう。1人の人間が成長する糧に、親、たくさんの人との出会い、試練、教育の他、その服やカバン、カメラ、を持って、今そこにいるあなたがいる。世の中に生かされているからできること」と坂上社長はおっしゃいます。

〜(株)さかうえの人材育成〜
そんな坂上社長は、今1番、「人材育成」に興味があるとおっしゃいます。一人一人の特徴に合わせた指導を行い、全体を通した後、本人が望む作業を担当してもらいます。自分がやりたい=責任感を持ち、従業員全体の自己実現を高めていきます。


「”日頃、考えていることの9割は人材育成”と、冗談のように笑いながらおっしゃる坂上社長ですが、社員教育には、いくらでも時間を費やしますよ」と採用担当の吉室さんはおっしゃいます。


(株)さかうえに就職したい!と、問い合わせや訪問される方は、年間100名ほど。その中から、筆記試験・論文、集団面接、個人面接、農業体験を経て、社長との面接で農業に対する熱意が本気で伝わってくる方を採用していきます。年間10名ほどの方々が、(株)さかうえのチームの一員となり、農業に対する想い、会社に対する想い、社長と同じ経営者の視点での考え方を1つとし、指導、教育を行っていくとのことです。ある従業員の方が、「本気で農業を頑張ろうと思っている人の中でも、意欲がある人、目標がある人でないと、さかうえでは働けないと思う」とおっしゃっていました。


その他、「自分は、今まで消費者という立場で野菜を見ていた。今は生産者という立場で、野菜を見ることができる。その中で、もっと野菜の価値を高めたいと思う。現時点のステップを踏んで、もっと農畜産物の大切さを伝えられる仕事をしてみたい」「坂上社長の経営に対する考え方や、農業に対する熱い想いすごく共感できたので、県外から鹿児島にきて今、農業を勉強してます。

すごく楽しいです」という方もいらっしゃいました。

(従業員を一部紹介)

なお、2年前、全国農業新聞に取り上げられた記事「やる気引出し成長」では、早く会社に貢献したいと言っていた田中純也さんは、今は、リーダーとなり、責任ある仕事、新入社員への指導、教育を頑張っていらっしゃいました。

実際に、現場にうかがうと、さかうえでは、農業面だけではない、経営、社会なども含め、世の中全体の状況を見ながら仕事ができる従業員を、本気で指導していく会社だと改めて実感しました。従業員の皆さんのチームワーク、いきいきとした表情、先をみた行動や考え方などが伝わってきました。

現在、役員6名、正社員38名 計44名の従業員がいます。
約10倍の狭き門をくぐりぬけた従業員のうち、14名が県外から「(株)さかうえで働きたい!」と志布志にこられた方です。


(株)さかうえでは、県外や地域外から志布志市への移住や、生産規模をあげるために必要な地元の土地運用などを介して、地域の関わりを持っています。また、農業には欠かせない農閑期と農繁期。自ら人材派遣業に係る資格を取得し、この時期を利用した県内のお茶生産農業法人への派遣、県外先進農業法人への交換研修を行っています。この取り組みは、県内のお茶生産農業法人への派遣は、県内の雇用者を守ることも位置づけられています。農繁期だけパートで入れ、農閑期にはやめてもらうという形を作らない様、年間を通し、長い期間働ける社員として雇用をしています。


県外先進農業法人への交換研修は、京都府のこと京都(株)さん、(株)杜若園芸さん、滋賀県の(有)フクハラファームさんと取り組んでいらっしゃいます。1つの視点からではなく、様々な作物や気候、こだわりや取り組みなどをより多くの視点でみることができる研修で、坂上社長は「交換研修に取り組んでから、従業員が、”もっと上を”と様々なことを目指すようになり、「自分でやろう」と動く子が増えてきた」とおっしゃいます。

〜(株)さかうえの農業経営IT化事業〜
150haの規模で生産する(株)さかうえでは、圃場別作付計画及び工程管理、作物別作付計画及び工程管理、社員別勤務状況及び作業状況管理などをIT化しています。

過去のデータを見つつ、今年いかに生産性をあげることができるか、坂上社長はもちろんのこと、従業員自らも課題解決に励みます。
今、「農業のIT化」と、よく耳にするようになりましたが、坂上社長が取り組みを始めたのは、14年前。実際、農業に携わっている農業法人が手掛けた生産管理・人材育成システムを必要とする農業従事者も少なくありません。


そこで、新事業として平成18年、農業経営IT化事業を築き、「農業工程支援システム」の開発・販売なども展開していらっしゃいます。

〜坂上社長の1日〜
坂上社長の1日は、午前2時頃から始まります。起床後、体操をしていらっしゃいます。趣味、特技である剣道の体力づくりかなと思っておりましたが、ここにも会社経営においてのポイントがありました。 「健全な体に健全な心がある」と常に身体のケアは徹底していらっしゃいます。

6時40分〜リーダーミーティングを行い、その後、全員での朝礼です。
朝礼の中で心がけていることは、「リスクをあげ、今日1日どのように取り組んでいくのか」従業員自らに考えさせ、実行してもらうこと。午後からは、経営発展のための勉強、経営発展していく中での危機管理勉強、従業員の人材育成などに費やします。私が、取材へうかがった日は、住商アグリビジネスの方々が1週間研修にこられていました。


他の従業員と同じように畑に出て作業をし、坂上社長の講演を聞き1週間滞在します。農業ビジネスに取り組んでいる中で、農業法人の抱えている問題や今後必要とされているものなど現場を通して学ぶことができます。
なお、さかうえにはこのように企業から1年間や1カ月、1週間など研修にこられます。 先日は、衆議院議員 副総理 岡田克也氏がさかうえへ訪問されていらっしゃいました!(詳細はブログ参照)

〜今後の(株)さかうえ〜
坂上社長は、「自分には(主体的な)夢や目標がない」とおっしゃいます。その理由は、『経営者としていかに強い人間かではなく、変われる人間が残るか』と考え、また、今までと同じことをしていくのではなく、常に自分を変える=成長をしていかなければないからです。


「これは、会社経営に対し、”いかに世の中に適応した会社を作るか”と、実行してきたし、今後も、世の中の期待に応える(株)さかうえを創り上げていく」と今後についておっしゃいます。

年間通して、県外を飛び回っていらっしゃる坂上社長は、会社の中では、「歩く広告塔」といわれていました。坂上社長がもっている人脈や、講師として招かれ講演やパネリストなどとして経営について発表をされることがきっかけで、業者からの契約野菜や新規就農希望者からの求人情報について、会社へ問い合わせの電話がかかってくる様です。


今後も、鹿児島県農業を担っていく(株)さかうえを、事務局一同応援いたします!

もっと詳しく(株)さかうえを知りたい方はこちら

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