令和2年度県工業倶楽部「工農連携研究会」との意見交換会
いつも大変お世話になっております。
鹿児島県農業法人協会事務局の坂口です。
12月16日、茶業部門の生産性向上勉強会の後に開催された、鹿児島県農業法人協会と、(公社)鹿児島県工業倶楽部「工農連携研究会」との意見交換会の模様を紹介します。
今回の意見交換会は、県工業倶楽部からお話をいただき実施しました。同研究会は平成28年に設置され、①人手不足や農作業の省力化、データ活用による生産性向上、②ICTを活用したデータの収集・分析システムや環境を自動で制御する設備の開発など、スマート農業の推進に取り組まれています。
まずは、両組織の会長からご挨拶。
鹿児島県工業倶楽部「工農連携研究会」の弓場秋信会長(弓場貿易(株)代表取締役)
「令和元年度にスマート農業先進国であるオランダ農業を視察し、IT化による労働力不足の解消や、高度な工程管理・品質管理・技術統合・システム化を学んできた。今後は、農業者の方々が抱える様々な課題や要望を具体的にお聞きし、私どもの会員企業のノウハウと農業とのマッチングにつなげていきたい。遠慮なくご意見をいただきたい」
鹿児島県農業法人協会 肥後隆志会長((農)ねじめ農園代表理事)
「農家の人手不足は深刻であり、解消のためには機械化しかない。工業倶楽部の皆さんと情報交換しながら関係を密にすることで、色々な解決策があると思う。今後も情報共有をしていきたい。また工業倶楽部さんには農産加工の企業も多いが、安く仕入れるのではなく、付加価値を付けて高く売る努力をしていただくよう、お願いしたい」
【意見交換会】
工業倶楽部「工農連携研究会」の弓場会長を座長に、農業法人協会会員が課題を提起し、その課題に対し、工業倶楽部会員さんが解決策を述べていただく形式となりました。以下は意見交換の抜粋です。(今回は会社名を特定しません)
課題を提起する鹿児島県農業法人協会のメンバー
<農業法人①>
一番の課題はお茶の霜対策。防霜ファンやスプリンクラーを用いており、センサーの自動化はしているが、目詰まりなど故障があるため、夜中の見回りが必要。壊れたら別なものが稼働するような補助的装置をつけることができないか。
<工業倶楽部>
トラブルがあったとき、次のものに切り替えるのは難しいことではない。「冗長性」を機械に設定すれば可能。夜中に人が出ないといけないというのは解決しないといけない問題である。ただ、技術的に可能であっても、お金をかけずにどこまでできるのか、また補助的機能を二重化、さらに三重化する必要があるかなど検討していく必要がある。
<農業法人②>
お茶の工場で、茶渋が問題となっている。長年洗浄メーカーも取り組んでいるが、なかなか成果は出ていない。2日に1回、工場で茶渋取りに時間を取られている。茶渋をとる仕事は数人がかりで数時間かけて行う重労働であり、これが解決できれば人手不足解消につながる。何かを使ってとれるのであれば、解決してほしい。
<工業倶楽部(3名回答)>
・茶渋は、葉茶をもむ工程でどうしてもつく。テフロン加工にするという方法もあるが、水も大量に必要であったり、大きな労力となっており難しい。甜茶(てんちゃ)については、もまず乾燥するので、省力化ができているが、煎茶については難しい。
・蒸した後、もまずに乾燥すると、茶渋の付き方が違う。最初に水分を減らせば茶渋の量が減るのではないかと考えているが、今後も対策を考えていきたい。
・茶渋については有機物であれば、チタンコーティングしたものに紫外線を当てれば分解できる可能性があるのではないかと思う。
<農業法人③>
茶畑で用いる被覆について巻き取る機械はあるが、留めるためのクリップ作業は人の手作業で行っている。機械化はできないか。
<工業倶楽部>
クリップの付け外しの作業を機械で行うのは難しいので、まずクリップを用いない方法を考えたほうがよい。この作業を自動化することで人手をどの程度削減できるか、どのぐらいの効果があるか、また、どのぐらいの(費用をかけた)装置であればできるかを考えた上で、自動化が生産性向上につながっているかを検討する必要がある。優先的な課題があれば、それを解決するための手段を具体的に考えていくという事を、ステップを踏んで行っていくことで、様々な意味での作業の効率化が見えてくる。
<農業法人④>
お茶農家であるが、売れるものを作りたいということで施設野菜(ピーマン)の栽培も始めた。ピーマンの新芽の生育度合いの判断が、経験のある農業者でも人によって判断基準が異なる。それを新規就農者が判断するのはさらに難しい。カメラである程度判断基準ができれば、経験のない新規就農者も計画を練って作業を行うことができ、それが成果につながることで、若い人材の確保もでき、労働力不足の解消にもなるのではないか。
<工業倶楽部(2名回答)>
・現在カメラとAIとを組み合わせて牛の分娩を管理するということを行っている。ピーマンの新芽の生育度合い判断についても、カメラとAIを組み合わせて学習させられたら、難しい話ではないと思う。
・どういう状態であれば次の作業に移るべきかをAIに学習させなければならないので、これまでの経験をデータにおとしていくというステップが必要である。データを暗黙知から経験値に変えるということが重要。
回答いただいた工業倶楽部のメンバー(抜粋)
他にも農業法人協会会員から多くの課題が提起され、その都度、工業倶楽部会員さんからアドバイスをいただきました。ありがとうございました!
活発な意見交換で、予定の時間はあっという間に過ぎました。異なる団体同士が集う意見交換会は、新鮮味がある反面、テーマの設定や進め方などが難しいというイメージがあります。さながら、異種格闘技戦のルールを決めるような(例えが古くてすみません(笑))
しかしながら、今回の意見交換会はテーマが明確であることや、弓場会長と事務局が綿密に打ち合わせされ、当日も農業法人協会のメンバーの悩みに真摯(しんし)に答えていただけるよう采配いただいたこと。また、工業倶楽部の会員さんも、その場で出た課題にすぐに回答してくださり円滑に意見交換が進行し、両メンバーから好評でした。
参加された(株)今村製茶の今村和也社長は、「工業倶楽部のメンバーが、普段はなかなか接する機会がない、すごい方々ばかりでびっくり。偉ぶらず親身に答えていただき感謝です。悩みごとは知ってもらうことが大事。具体的な課題に一緒に取り組んで、解決に導くきっかけにしていきたいです」と感想を寄せられています。
県工業倶楽部「工農連携研究会」では、今後も、農業者の課題や要望が解決できるよう、会員企業のノウハウと農業とのマッチングを目標に、各方面との意見交換を重ねる予定です。鹿児島県農業法人協会も工業倶楽部さんと活発に情報交換を行い、会員の経営課題の解決・経営発展につなげていきます!
意見交換会終了後は活発な名刺交換が行われました。